大型医療機器導入の際の注意点
物件選定の際に希望にぴったりのものが出てきても物理的な問題で諦めなければいけない状況になることも多いのが大型医療機器の導入だ。
ビルオーナーの許可が取れない、費用面で折り合いがつかないなど理由は様々あるが、いろいろなハードルをひとつずつクリアしていくことが重要になると同時に多くの関係各社の協力が不可欠である。
大型医療機器と言えば、MRIやCTなどが主なところだが、この二つの医療機器導入の際に一番の問題となるのは重量である。
一般的な事務所ビルは耐荷重300㎏/㎡程度だが、CTは2t超、MRIは仕様により異なるが10t前後に至るものもある。
一概に㎡での耐荷重では言い表せないが、到底300㎏/㎡程度で導入できないのは容易に想像できると思う。
それではそれを超える耐荷重が必要なのかというとそうでもない。
比較的コスト安で抑える方法としては、設置位置を限定する方法である。
ご存知の通り建物には柱があるが、柱と柱をつなぐ梁と言われるものもあり、その上に重い部分を乗せることで設置可能にする方法である。
当然この方法には構造計算などの検証が必要となるため時間も要する。
もうひとつは補強を入れて耐えうる荷重を作り出す方法となる。
この補強方法は鉄板を敷く方法や鉄骨を敷いてその上に乗せるなど、方法、コストとも様々だ。
MRIについては、重量の問題以前にクリアしておかなければいけない磁場測定がある。
この磁場測定とは、該当物件にMRIを設置した場合の磁場環境を測定するものである。
これは各機器メーカーへ依頼することで行えるが、各メーカーや仕様で許容範囲の数値などが異なり、工事費用などにも反映されることになるため、検討するメーカー各社にお願いすることが良いだろう。
ここまでの内容でもわかる通り大型医療機器の場合、まずはメーカーによる設置の可否の検証が必須となり、その先については決定したメーカーとの打合せをもって進めていくことになる。
選択肢として導入可能なメーカーすべてに対応できるような形で進めるという理想論もあるが、すべてに対応するということは最大値を見ていくことになるためコストやプランに無駄が多くなる。
機器自体のコストもそうだが、その後の工事費にも影響が出るため、コストを抑えるためと思って進めていることが実はそうではない結果を招いていることが大半だ。
コストを抑えたいのであれば、早い段階でメーカーと内装業者を決定し密な打合せを繰り返し行うことをおすすめする。
CTなどの放射線機器については、防護工事と言われる遮蔽するための工事があるが、比較的問題になることは少ない。
一方、MRIのシールド工事と言われるものは画像そのものに影響を及ぼすため、メーカー側の業者にお願いすることが多い。
そのため、どこまでを内装業者で行い、どこからがシールド業者の工事なのか、どのタイミングで搬入されるのかなど打ち合せる事項がたくさんあり、しっかりと認識し合うことが大切になってくるため、時間を要することが多い
プランを作成する際にも気を付けておかなければいけない点がいくつかある。
まずは搬入経路の確保である。
平面図だけを見ていると忘れがちだが、建物の外から区画内、CTもしくはMRI室まではどのように搬入するのかを検討しておく必要がある。
場合によっては、工事中に搬入してしまわないといけない状況もあるかと思うが、その場合はどのタイミングで搬入されるのかを事前に打合せておく必要もある。
医療機器を稼働させるための機械室は機器から結構な熱量を発せられるため、年中冷房になることが多いがその空調機設置は可能か、など平面上だけでは見えないことも少なくはない。
一般的に言われている電気容量の問題など、インフラ部分の検証はもちろん必要だ。
しかしながら、それ以上にどうすれば導入できるのかをいっしょに検討し、進めていってもらえる関係各社の協力、連携なくしてはうまくはいかないことを忘れないでほしい。